「焼肉 飯旨苑」はにくがとうグループが主体の住所完全非公開、完全予約制の会員制焼肉店だ。元は「にくがとう」という名前の店舗であったが、なるべくアラカルトよりもお客様納得のコースを楽しんでほしい、という想いから2024年1月に名前とコンセプトを変更し、再スタートを切ったという。
入店には既に会員である人からの紹介が必要で、そのうえで予約が取れるかどうかが重要になる。また、位置情報が判断できる外観や内装についてのSNSへの投稿やグルメサイトへの投稿が禁止されている。(商品のみの写真であれば個人のSNSに掲載は可能)
某格闘技漫画の主人公一家を思わせる店名なだけあり、そのコンセプトも「強くなりたくば飲んで食べろッッ」。なんと力強いメッセージだろうか。入店前からそのあふれんばかりの気迫を感じつつ、胸に大きな期待を寄せて我々は暖簾をくぐった。
入店後の最初の1杯はビールか烏龍茶の二択である。
もちろん私たちは「とりあえずビール!」である。
ドリンクを頼んだところで店員さんからアナウンスがあり、お品書きと注意書きが両面に書かれた案内の紙を見ながら注意事項を聞く。
(お品書きは昔のもので、現行のものと中身が違うので注意)
注意事項は以下の通り。
- 90分制で完食の条件の下ならいくらでも注文が可能。
- 一品でも残すと会員剥奪となる。2名以上の場合も全員にそのルールが適用される。
- 飲み物はすべてセルフサービスで冷蔵庫の中から好きなものを選べるシステム。
取った飲み物を逐一「飲み物表」に記録していく。お残しがなければ料金は無料になる。 - 二つのインスタグラムのアカウントをフォローする。
注意事項のアナウンスが終了すると共に闘いのゴングが鳴らされた。
比喩では無く、実際に本物の格闘技の試合で使われるようなゴングを店員さんが勢いよく鳴らす。こうした諸所のパフォーマンスからも店側のこだわりと心意気がうかがえた。
ROUND 1:マヨネーズキャベツ
まずはサラダから。品名は「意外とうまい紅しょうが」。ビールにぴったりのあっさりとしたおつまみで、一戦目には最適である。
ROUND 2:上タン塩に上レバー
品名は「ご飯の前の練習試合」。
上タンは薄すぎず分厚すぎない丁度いい厚みのカット。いい塩梅の味付けでカットレモンを絞ると牛タンの醍醐味を強く感じる一品。
上レバーはよく焼きでじっくりと焼いていく。
舌にのせてほおばると、しっとりとした触感でレバーの肉感を良く感じられる。
味変として付属の上タン塩用のレモンをかけるとサッパリとした味わいに。
ROUND 3 & 4:ご飯
品名はそれぞれ「主役のご飯」「ネギ野郎とご飯」である。炊き方はもちろん鍋炊き。
そして提供されたお肉は内もも。
さらにはおかわり無料のROUND調味料なるものが登場。
名を冠するは「罪なネギだれ」。
薄切りの内もも肉を丁重に焼き上げたら、ツヤツヤの炊きたてごはんにさきほどのネギだれと一緒に乗せて…ひと口!
思わず「嗚呼…」とため息を漏らさずにはいられない。
えもいえぬ満足感と多幸感に包まれた瞬間であった。
そうしている間にもテーブルには新たな刺客が現れる。
はんま特性焼肉のタレである。
柔らかな甘みのタレでご飯にかけてもう一口。市販のものでは絶対に表現できないであろうまろやかさに取材陣は思わず舌鼓を打った。
ROUND 4: ラムとカイノミ、サーロイン
ついにRound4。品名は「はんまダレとご飯」大量のお肉の登場である。
1.ラム
まず最初に我々が箸を運んだのはラム。
良く焼いたラム肉に特性タレをかければ、タレの癖のない甘みがラム肉特有の臭みを消しつつ、中心に眠るまだ見ぬ旨みを引き出してくれる。ご飯をかきこめば、目の前には羊がのびのびと暮らす牧草地が広がる気さえしてくる。
2.カイノミ
次に我々が口にしたのはカイノミ。しっかりした噛みごたえで弾力のある肉質であり、ハラミに似た触感であった。店員さんいわく、カイノミはバラ肉の中でもヒレに最も近いため、赤身と脂のバランスが最高で、その名の由来はムール貝に形が似ていることからきているそうだ。
3.サーロイン
最後に現るはサーロイン。一たび口に入れるとその上質さに思わずうっとりとしてしまう。キメ細かい霜降りのとろけるような脂の旨味で甘みを感じつつ、しっかりとした赤身の味わいも楽しむことができる。サーロインは牛の背中の真ん中にある部位だそうだが、まさに食べた人を背中に載せてどこかへ運んで行ってしまいそうな、大胆さと上品さを兼ね備えた至極の逸品といっていいだろう。
これほどまでに完成されたお肉があっていいものだろうか、と思わずにはいられない。
ROUND 5:はんまライム冷麺
お肉をたっぷりと堪能したところで冷麺が登場。品名は「クールダウン」
かつおだしの効いたスープとムチムチ感の強い冷麺のマリアージュで、まずはそのまま一口いただく。
付属のライムを絞れば柑橘系のさわやかな風味があっという間に加わり、グッと味の奥行きが広がっていくと共に口にわずかに残っていたお肉の脂身はあっという間に消えさっていった。
読者のみなさんもまずはそのまま、ひと口すすっていただいた後にライムをガッツリ絞って食べてみていただきたい。その消失体験にはアッと驚かれることであろう。
ROUND 5:◉おかわりタイム◉
品名は「追い込み おかわり無限」。
今までのお肉や出ていないお肉の中から店舗側のセレクトで※アラカルトで出される。
※アラカルトとは:献立表から好みに応じて一品ずつ注文する料理のこと。またそうした食事方法のことも指す。日本語では一品料理、お好み料理ともいう。
1.タンとラムつくね
一品目として出されたのはタンにラムのつくね。
焼き上げる姿はもはや儀式というべきほどに神秘的な美しさを帯びている。
まずはラムのつくねをいただく。とその前に店員さんから一言。
「ラムつくねは焼き上げたあとにピーマンと合わせてコチュジャンをつけてお召し上がりください。」
まさかのコチュジャンという調味料のチョイスに取材陣一同衝撃を受けつつ、店員さんからの進言通り、合わせていただく。
すると口の中にはあらよあらよとあっという間に魅惑の世界が新たに広がった。新鮮なピーマンと弾力のあるラム肉、そして刺激的なコチュジャンの味。これこそまさに三位一体とも言うべき組み合わせで、稲妻に打たれたかのようであった。
2.内もも、カイノミ、サーロイン
次に提供されたのは先ほども食べた内もも、カイノミ、サーロイン。
しかし先ほどと違うのはタレ肉用の卵、エゴマの葉も配られたことである。
まずは内もも。
肉質はサッパリとしていて非常に食べやすいが、卵をつけると変貌。濃厚な味わいに早変わりする。タレの甘みと卵の旨味で舌の上で一瞬でとろけてしまうのだ。
カイノミとサーロインは卵にくぐらせてエゴマの葉とネギだれで合わせていただく。口の中に広がる旨味は言葉に表すのもはばかれる程のおいしさであった。
3.羊ロース
次に提供されたのは羊ロース。
店員さんが網をフォームチェンジ。こぼれ落ちないように、そして焦げやすいので混ぜながら焼いてくださいとの指示を受ける。(と言いつつも焼いてくれる店員さん。店員さんの温かいホスピタリティ精神に胃袋だけでなく心まで満たされてしまった。
味付けはピリ辛で焼肉メニューのラストを飾るにふさわしい一品であった。
ROUND 6:パイナップル
品名は「バカンス」。
オシャレなカットで見た目がすばらしいのは言うまでもなく、味も甘みが強くとても美味しかった。
ちなみに近年人気が高まりつつある台湾パインは芯まで食べられるのだが、残念なことに今回は別の種類だったようで芯までは食べられなかった。
またパイナップルには肉のタンパク質を分解する酵素「ブロメライン」が含まれているので、食後にパイナップルを食べることにより消化をよくして帰路につくことができる。食べる人のことを良く考えた、胃に優しいコースの締めくくり方であったといえる。
■お店の基本情報
飯旨苑
・完全住所非公開
・完全予約制
Instagram:https://www.instagram.com/hanmaen_official_nikugatou